初盆を迎えて──ひとりになった暮らしの中で 妻の初盆を迎えた。 使わなくなった冷蔵庫の上に、妻の遺影をそっと飾り、果物や朝のコーヒー、昼のご飯をお供えしている。 冷蔵庫は、療養中の妻が生前に専用で使っていた「形見のような冷蔵庫」だ。 そこに遺影…
ある日、突然アマゾンからの不審なメールが届いた。 「おかしいな」と思いながらも、深く考えずに操作してしまったのが運の尽きだった。 気づいたときにはアカウントは乗っ取られ、勝手に高額の決済が行われていた。 幸い、すぐにカード会社へ連絡し、カード…
紙フィルターで淹れる「エカワ珈琲店流ハンドドリップ」 毎日飲むコーヒーを、手間をかけてハンドドリップで淹れる。 これは、コーヒー好きにとって小さな幸せの時間です。 エカワ珈琲店では、店主が子どもの頃から家業の喫茶店で見て覚えた淹れ方に、昭和の…
火を灯すと、お湯が勢いよく上がり、コーヒーがふわりと香り立つ まるで小さな実験ショーのような抽出方法が、サイフォン式コーヒーです。 ガラス器具の中で起こる変化を“目で楽しみながら”、驚くほどクリアで香り高い一杯が淹れられます。 サイフォン式コー…
和歌山市には、昔ながらの自家焙煎店や老舗の喫茶店が今も残っています。 我がエカワ珈琲店も、昔ながらの自家焙煎店で焙煎コーヒー豆の小売専門店です。 そこで出会うのは、しっかりとした苦味とコクを持つ深煎りコーヒー、そしてほろ苦さと甘味が同居する…
75歳の私が、これからの働き方を見つめ直した話 3月の中頃、焙煎コーヒー豆の小売商売を再開した頃は、店の空気がどこか明るく感じられていました。 ゴールデンウィークあたりまでは「まあまあ忙しい」と思える日が続き、体調とも上手く折り合いがついて…
コーヒーノキから焙煎豆、そして私たちのカップへ 私たちが毎朝のように口にする一杯のコーヒー。 その香りや味わいは、焙煎されたコーヒー豆から生まれます。 しかし、その焙煎豆の旅路をたどると、コーヒーは思いのほか長い時間と手間を経て、ようやく私た…
75歳。 世間では「後期高齢者」と呼ばれる年齢です。 けれど、私にとってこの数字は弱みではなく、むしろ“物語の核心”になりつつあります。 何故かというと。焙煎歴30数年、75歳が「唯一無二のブランド」になるからです。 ジジだけロースターという生…
コーヒーの栽培 ・・・一杯のコーヒーは畑から始まる コーヒーの旅は、熱帯の畑から始まります。 コーヒーノキは、赤道を挟んだ「コーヒーベルト」と呼ばれる地域──中南米、アフリカ、アジア太平洋の温暖な土地で育ちます。 栽培に求められる条件は意外と繊…
働く理由はひとつではない 若い頃、「人はお金のために働くものだ」と、どこか当然のように思っていた。 お金持ちはさらに富を求めて働き、貧しい人は生活苦から抜け出すために働く。 そんな単純な図式で世の中は動いているのだと信じていた。 確かに、お金…
コーヒーの歴史をめぐる旅 世界で一番飲まれている嗜好飲料──それがコーヒーです。 毎朝の一杯、仕事の合間の一息、友人との語らい。 私たちの生活のあらゆる場面に寄り添うコーヒーは、どのようにして世界中の人々に愛される飲み物になったのでしょうか。 …
あれは、まだ妻と二人で店を切り盛りしていた頃――2023年の春のことです。 エカワ珈琲店は、和歌山県庁のすぐ近く、官庁街の一角にあります。 朝はスーツ姿の人たちが足早に通り過ぎ、昼には官公庁の職員や近くの会社員が弁当を手に歩く。 夕方になると、…
『エカワ珈琲店の焙煎豆商売はいま、どんな段階に来ているのか』 ──店主の私が、正直に書いてみます。 エカワ珈琲店のコーヒー生豆は、100gあたりだいたい200〜250円で仕入れている。 焙煎すると水分が抜けて15%ほど軽くなり、売れ残りやロスも…
去年の今頃、私はまったく違う日々を生きていました。 長期入院していた妻が退院して一か月。 身体障害者手帳1級となり、介護なしの生活は不可能になっていました。 介護といっても、主な仕事は透析の付き添いです。 しかし、透析治療以外にも診療や検査が…
3月の中旬、長い休業を経てエカワ珈琲店の焙煎を再開した頃、私はまだ本調子とは言えませんでした。 週に1日、午前中に2バッチ焙煎するだけで、ぐったりと疲れ、体調もどこか不安定。 焙煎という仕事は、体力よりも気力を使うものだと、あらためて思い知…

